「では、いよいよ無人島に向けて出港しま〜す!」
アナウンスとともに、船に乗り込み港を出ます。子どもたちは初めて出会う自然に胸をふくらませ、大人たちの中には小さい船ならではの海の近さに、いつもの殻を脱ぎ捨てて、子どもに返ったような素朴な瞳になっている人もいます。
ここは伊勢湾の入り口。この鳥羽湾は船の「泊まり場」がなまって「トバ」⇒鳥羽となったと言われています。船が主な輸送手段であった頃、航海の日和を見る港として古くから海の旅人を迎えてきたところでもあります。
そんな歴史をもつ鳥羽市には、4つの有人離島と10以上の無人島があり、漁業も盛んな町です。漁師の数は現在日本で4番目の多さで、古くからこの伊勢湾・鳥羽湾の恩恵を受けて生きてきました。この辺りでおいしい魚介類が獲れるのは、木曽三川をはじめその他いくつもの河川が海に流れ込み、豊かな日本の森とつながり海が育まれているからです。
私たちがツアーを行っている伊勢志摩国立公園の海岸は岩場と砂浜が入り混じり、特に磯場は小さな生き物たちのゆりかごの役目を果たしている大切な場所です。鳥羽の磯場では、海藻や海綿が育つための繊細な条件がそろっているので、海藻がとっても豊富です。そのため、魚や貝類、ウニやヒトデなどいろいろな種類の生き物たちが、卵を産みにやってくるのです。その卵からかえった小さな命は、鳥羽の磯場で大きくなって、巣立っていきます。
干潮時には、この磯場が広大なタイドプールとなって姿を現します。私たちは、生き物の赤ちゃんたちや、そこで暮す他の生き物たちの様子を見ることができるのです。誰もいない浜に自分たちだけ、というのは気持ちのいいものです。でも、あまり大人数で毎日行くと、自然をそのままにできなくなってしまい、保全ができなくなるかもしれません。そのため、私たちはツアーの人数を制限したり、開催日の制限をしたりしています。また、シュノーケルやクリアカヤックで魚気分を味わうことで、自然への付加が少なく、臨場感あふれる利用方法でも楽しんでいただけるような海島遊民くらぶならではのお客様や自然や住民のみなさんに心地よいツアーを企画しています。
ツアー一番のポイントは、一見、人間の生活とは切り離されている世界が、人間の暮らしとつながっている、ということに気付くことだと思います。
鳥羽の海ならではの魅力は自然や生き物だけではありません。そんな自然に直接向き合った生活をしている人々です。そこへ行くと、地元の人しか知らないような食べ物やその営みが、島や漁村で生活する「とおさん」や「かあさん」 たちの暮らしを通して見えてきます。
たとえば「サメのタレ」(干物)や「エイのヒレの干物」。これらは地元でもわずかにしか流通していません。サメやエイを島のかあさんたちがさばき、それぞれの家庭の味をつけて外に干す。そんな場面に出会うと、その干物を通して島のかあさんの家族や、それを食べさせてあげようと思っている人たちへの愛情が伝わってきます。そうしてできた干物を、ツアー中にお願いすると分けてくれます。購入するツアーの参加者たちは、安くておいしそうに見えるから、という理由だけではなく、かあさんたちの笑顔に安心し、島の人情を自宅や友人へのお土産として伝えたくなるのかもしれません。
私も、鳥羽の島々にわたるといつも変わらない風景への安心感と同時に、毎回新たな発見や感動があります。季節によって、花も虫も海藻もまったく違います。その島の人たちは、季節に応じた生活をしています。離島は決して便利ではないけれど、だからこそ、守られ、育まれているものに魅了され、生きた自分を再確認できるような心地にさせられます。そんな島や海岸の自然や人々の暮らしに豊かさや温かさを感じることができるのも、ここでしか、これでないと味わえないという、お金では得られない価値になっていると思います。
風待ち港として、海女の国として、古くから旅人を受け入れてきた鳥羽湾の島々では、海も山も人々も、ゆったりと迎えてくれます。私たちも女性やお子様が無理せず、自然の中でゆったりとお過ごしいただけるようなツアーをご案内しています。
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